あどぶいらの御代

野や森の動物たちは、王様にあどぶいらを戴いていた。あどぶいらは残酷なことを嫌い、力で支配することもなかった。つまり、人間の王様のように、公正で心優しかったのだ。彼の御代に、鳥や獣たちの会議が開かれた。そこで彼は、王として次ぎのような宣言をした。「共同体の決まりとして、……オオカミと仔ヒツジ、ヒョウと仔ヤギ、トラとニワトリ、イヌとウサギは、争わず、親睦をもって、共に暮らすこと……」ウサギが言った。「弱者と強者が共に暮らせるこんな日を、私はどんなに待ちこがれたことか……」ウサギはそう言うと死にものぐるいで逃げていった。地上の楽園などこの世にはない。

あどぶいらの世界